それは悪夢にも似た光景だった。
2年前、まだクロス師匠の弟子として
借金を返す事に夢中になっていた頃に、目の前の男は現れた。
男は見るからに成金らしきいでたちで、
取り巻きにいかつい大男を数人はべらせていた。
もとより汚い噂の耐えなかった男は、悪どい貸付をしては
法外な利子を請求していた。
おちごしゅみ
当時から御稚児趣味のあった男は、クロスの元に借金を取り立てに来た先で
まだ年端もいかない弟子のアレンを見るなり、
言う事を聞けば借金の納期を遅らせても構わないと言った。
どういうわけか師匠はその場にはおらず、
対応に困ったアレンは、おずおずと男に聞き返した。
「……あの……言う事を聞くって……
何をすればいいんでしょう?」
アレンを嘗め回すように上から下まで見つめると、男は
しめたとばかりに嬉しそうに告げた。
「それはお前次第だが……
そうだな……まず手始めに、これでも舐めてもらおうか?」
「……ええっ……?!」
目の前に突き出されたものは、汚らしい男の性器だった。
「こっ、これを舐めるんですか……?!」
驚きと嫌悪感のあまりに後ずさるアレンに、男は面白そうに続ける。
「上手くできれば、そうだな……褒美として10万やろう。
今日払ってもらう分の借金も、チャラにしてやるぞ?
もし、お前にそれ以上のことが出来るなら、
場合によってはもっといい条件を考えてやってもいい」
「?!」
驚きで目を白黒させるアレンに、男はじわじわと詰め寄ってくる。
「まずは手始めに、これを咥えてみろ」
「……うっっ……!」
力任せに頭を押し付けられ、床に膝を折る体勢になったアレンに、
男は自分の性器を無理やり押し付けた。
その生々しい感触に吐き気を覚えて顔を背けようとしたが、
男の手に頭を固定されてしまい、簡単に身動きが取れない。
「……うっ……ぐふっ……」
気持ち悪さと裏腹に、口の中の異物は徐々にその容量を増していく。
涙目で苦渋を訴えるアレンに、男は益々興奮を募らせた。
「……ほら、早く終わって欲しかったら、舌を使って裏側を舐めるんだ。
間違っても歯を立てたりするんじゃないぞ…!」
「……うっ……ううっ……」
苦しさのあまり、アレンは言われるままに舌を動かす。
そのつど男のモノが大きさを増し、頭を押さえつけられると、
咽喉の奥に先が当たって強烈な吐き気が襲う。
「……んっ……ぐうっ……!」
気持ち悪さに拍車がかかり、もう我慢できない状況に陥ると、
男は簡単に、アレンの口の中に生臭い液体をはじき出した。
「うっ……ぐえっ……!」
アレンは男の手から開放されると同時に、
すぐさま勢い良く口の中のものを吐き出した。
あまりの不快感に、次いでは胃の中味のものまでも一緒に吐き出してしまう。
ショックのあまり、うつむいたまま立ち上がれずにいるアレンに
男は揶揄するような笑みを湛えながらつぶやいた。
「……おい、おい、ひょっとして男のモノをしゃぶるのは初めてか?
まぁ仕方ないか。
今日はお前に免じて取り立ては勘弁してやるよ。
本当はお前が俺のところに来れば、
借金なんて全部チャラにしてやっても構わんのだがな……」
「……ぐっ……それだけは、絶対、絶対にイヤですっ!!」
「はは……そうか……? 仕方ないなぁ…… ざんねん、ざんねん」
愉快そうに笑う男は徐に自分のものをしまい込むとその場を後にした。
だが、その後も事あるごとにアレンの元を訪れては、
同じような行為を幾度となく強要したのだった。
身体を売ることまではしなかったが、
口で性処理をし金銭を得ることが出来る術を覚えたアレンは、
好んでいたわけではなかったが、その手段を用いて金銭を得るようになった。
忌まわしい過去の引き金になった、死ぬほど嫌な男……
その男が今、目の前にいる。
瞳をギラつかせ、厭らしく舌なめずりをする仕草は、
忌まわしい過去にしまいこんでいたはずのアレンの嫌悪感を引きずり出した。
「随分と苦しそうじゃないか? 今すぐ俺が楽にしてやろう……
それから嫌と言うほど楽しませてやるから、期待するといい」
「……んなっ……!
傍に来るな! 僕はっ、お前となんてっ……!!」
「……ほほう……その強がりが何処までもつかな……?」
男はギシという軋みとともに、アレンが縛られているベッドの上へと伸し上がる。
「ほぅら、ココなんて、もうこんなだ…」
「ちょっ……ああっ……!」
男の生暖かい手が、アレンの露わになった下半身に触れる。
何の前触れもなく触れられたそこは、媚薬のせいで敏感になりすぎていて、
ただ握られただけで、アレンは快感のあまりに身体を仰け反らせた。
アレンの表情に気を良くした男はさらに厭らしい笑いを浮かべ、
後ろからアレンを抱え込むと、その首筋に唇を這わせた。
「……やっ……ああっ……!」
片手ではその胸の突起を弄び、
もう片方の手はアレンの下半身を覆い、ゆっくりと扱き出す。
わずかな動きだけでも、その刺激はアレンには充分すぎて
先走りの液で淫らに男の掌を濡らしだしていた。
「……ああっ……やっ、やめてっ……お願いっ!」
「止める?……もっとの間違いじゃないのか?」
「ううっ……ああっ……!」
指先で軽く先端を弄られるとアレンは大きな嬌声を上げ、
あっという間に白い液体をシーツの上にはじき出したのだった。
はぁはぁと肩で息をしながら、アレンは瞳に大粒の涙を浮かべる。
いかに媚薬のせいとはいえ、大嫌いな男の手の中で
いとも簡単に果ててしまったのだから、自己嫌悪に陥るのも無理はなかった。
――――畜生……畜生……!
心の中でいくら男を拒んでみても、身体が思うように言う事を聞かない。
このままでは、男の思うままに事が運んでしまうのは目に見えていた。
身じろぎするたび、カシャカシャと冷たい金属音が神経を逆撫でする。
「さぁて、これからが本番だ。
今まで長いことおあずけを喰らっていたんだからな……
今日は思う存分楽しませてもらおうか?」
「うっ……くそっ……!」
男の手から逃れようとするが、四肢を拘束された状態でそれが叶うはずもない。
それをいいことに、今度は男の手がアレンの腿を割って入ろうとした。
「やっ……やだっ!」
不快感に瞳を閉じて抗おうとする。
瞬間、瞳の奥に浮かんだのは愛しい神田の顔だった。
端整で凛としていて、いつまで見ていても飽くことのない大好きな顔……
―――もう我慢できない――――
アレンが左手に意識を集中し、その鎖を引き千切ろうとした時、
部屋の扉が蹴破られる音がした。
「うわっ……! お、お前はっ……!!」
男が大きな声を張り上げてたじろぐ。
「言ったはずだ……
殺されたくなけりゃ、二度とこいつに近づくなってな……」
「わ、わかった、俺が悪かった!
だから、殺さないでくれっっ!!」
部屋に低く響き渡るその声は、アレンが心から望んでいた者の声だった。
「か……かんだ……?」
アレンのあられもない姿を見て、僅かに瞳を細めたかと思うと、
神田は自分が身に羽織っていた上着を脱いで、
ふわりと白い姿態の上へ覆い被せた。
そして、その背後にある男を鋭い視線で射抜く。
「本当に死にてぇみたいだな……」
「ひっ……ひぃぃぃ……!」
神田は六幻を抜刀すると、勢い良く男の頭上に振りかざす。
先端から解き放たれた閃光が、男の身体に無数の傷を刻んでいた。
ほとばしる閃光。
ちしぶき
弾け飛ぶ赤い血飛沫……
「……だ、だめっ!!……かんだっ……!」
自分の背後にいた男の身体に、無数の傷が刻まれ、
それと同時に悲鳴に似た小さな呻き声が聞こえた。
同時に目の前に飛び散った赤い飛沫が、事の次第をアレンに告げる。
「だめです!神田! 殺しちゃダメですっ!!」
目の前に佇む神田の殺気は本物だった。
それはアレンが神田に初めて出会ったときの殺気とは比べ物にならないほど
冷たく鋭いものだった。
AKUMAと対峙したときでさえ、こんな殺気を放っていたことはない。
それだけ神田の怒りが激しく、留まりどころを知らないことを示している。
いかにこの男が酷い奴で、殺したいほど憎い相手だとしても、
所詮は人間である。
神に遣えエクソシストとして働く所以は、あくまでも人間を救うためのものなのだ。
そんな自分たちが人間を殺めていいはずはない。
自分が身の危険を知りつつそれを回避できなかったのは、
彼ら人間に危害を加えたくないからに他ならなかったのに……
―――僕のせいで……神田が……
叫びと共に涙が零れ落ちる。
「……殺しちゃいねぇ……」
「……え……?」
「ばぁか……死んじゃいねぇよ。
ちょっと灸を据えただけだ。 まぁ、しばらくは動けないだろうけどな」
「……かんだ……」
安堵の溜息と共に、大粒の涙と嗚咽が漏れた。
「……ったく、帰って来ねぇと思えば、こんなとこに掴まりやがって……」
「……カンダぁ……」
神田はアレンが拘束されている鎖をいとも簡単に切り刻むと、
その手にアレンを抱きしめた。
泣きながらすがり付くアレンを抱きしめ、なだめながら、
壁際になだれ込む血だらけの男を睨みつけて、言い放つ。
「今度コイツに手を出したら、その時は躊躇なく殺す……」
その鋭い眼光が放つ威圧感に抵抗できるものなど、
この世には存在しないだろう。
男は恐怖のあまり顔を引きつらせながら、這いずる様にその場から逃げ出した。
「……帰るぞ……」
「……はい……神田……」
薬のせいで身動き取れないアレンをその手に抱きかかえると、
神田はその部屋を後にした。
遠のく意識の中、
背後に見えたのは、申し訳なさそうに会釈するあの貴婦人の姿だった。
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≪あとがき≫
アレンくんファンの皆様、ごめんなさいm(_ _ ;)m
彼の綺麗な身体のイメージを損ねてしまいました……??よね??
アレンに触れてもいいのは神田だけだぁぁぁぁぁぁぁ!!
……と思っていた方、まぁ、私もそうなんですが、
とりあえず最後まではさせてませんのでご容赦ください( ̄▽ ̄;)
さて、次回も裏です★
今度は神田×アレンの甘々エッチの予定ですv
お楽しみください〜〜〜(⌒∇⌒)ノ""
ブラウザを閉じてお戻り下さい★
Spiritual whereabouts 10
――魂の在り処――